小さな薬局で働いている薬剤師です。機能性ディスペプシアという言葉を最近良く聞くようになりました。胃腸の調子が悪くて何回受診してもこれと言った原因が見つからず、お腹が張ったり、みぞおちが痛くなったりと不快な症状がなくならない病気です。 関係あると思われる原因、なりやすい理由などを調べてみました。
気持ちが沈んでいるとなんとなく食欲がなくなったりするけれど、そういった精神的なこともガイドラインには原因のひとつとして書かれています。
機能性ディスペプシアの原因はひとつじゃない
機能性ディスペプシアの原因と思われているものは、消化管の機能低下、感染症、胃酸、遺伝、精神的(ストレス)、アルコール、喫煙などがありますが、そのなかの1つだけではなくて複数の原因が関係して複雑に絡み合っている言われています。
1.胃適応性弛緩障害
食事をして食べ物が胃に入ってくると、風船のように胃が伸びて(弛緩)食物を一旦ため込みます。この伸びる機能がうまく出来ないとすぐおなかがいっぱいになってしまいます。
2.胃排出障害
今度は胃でため込んで消化した食物を腸へ送らなければなりません。胃は波打って食物を腸へ送り出そうとしますが、これが遅ければ胃がもたれる原因になると考えられますし、また早すぎても消化される前に固形状の食べ物が腸へ送られるとその刺激が症状の原因になるとも考えられています。
3.内臓知覚過敏
胃袋の次は十二指腸に入るわけですが、この腸に入ったところが知覚過敏になっていると症状の原因になります。
胃が伸びたときに押される刺激や、冷たいものなどの温度刺激、その他、酸や脂肪が十二指腸に流入することでも機能性ディスペプシアの患者さんは健康な人より吐き気、膨満感、不快感、痛みを感じることが分かっています。
4.心理社会因子
脳と腸管は密接な関係があり幼少期の体験、ストレス(環境的、社会的)、不安、抑圧が腸の働きや感覚に影響をしています。
なかでも過去のストレス、虐待を受けた経験と関連があることが認められているのには驚かされます。
5.胃酸
機能性ディスペプシアの人は正常な人より十二指腸の中が酸性になっていて、胃酸が十二指腸に流れ込むことで症状を引き起こしている可能性があると報告されています。胃酸の量は正常の人とあまり変わりないそうです。
6.ヘリコバクター・ピロリ菌感染
ヘリコバクター・ピロリ菌という胃の中に住み着いて悪さをする菌がいて(主に井戸水から感染する)ピロリ菌を除菌することで機能性ディスペプシアが良くなることから関係があると思われています。
7.家族歴・遺伝的要因
家族に機能性ディスペプシアの人がいるとなりやすい傾向はありますが、遺伝子的な関連はまだ明確には分かっていません。
8.感染性胃腸炎
急性感染性胃腸炎になったのをきっかけに治ったあとも機能性ディスペプシアをと思われる症状を持続するこがあり、スペインでサルモネラ感染症が流行したあとに機能性ディスペプシアが増加したという例があります。
9.生活習慣、食習慣
喫煙、アルコール、不眠は症状と関係はあるようですが、絶対悪影響を与えていると分かっているのは喫煙です。
アルコールや不眠はそのものと合わせて、そのような社会的環境(飲まなきゃやってられない状況、何度も目を覚ましてしまうような精神状態)が関係していると思われます。独身生活者に多く見られる傾向があると言うのも興味深いデータです。
食習慣は時々食事を抜いたり、早食いをしたり、夜間に脂肪分の多いものを食べる傾向があるようです。
辛いものが好きな人は刺激で灼熱感が起きることがありますが、一方、唐辛子を日頃から食べている人はむしろ症状を軽くしている可能性があるとのこと、これはからみ成分のカプサイシンが胃の血のめぐりを良くするため胃薬として使われている成分だからです。
10.胃の形状
普通の人よりも胃が下がっている胃下垂の人は機能性ディスペプシアの症状は出にくい傾向があり、胃の上の方が大きくお辞儀をしているような形の瀑状胃(ばくじょうい)の人は、胃酸の逆流と機能性ディスペプシアの例が多いようです。
まとめ
当てはまるものが全部原因になるわけではありませんし、機能性ディスペプシアの症状がある人の中ではこうゆう人が多い、という傾向の話も混ざっているので、該当するからと言って必ず機能性ディスペプシアだ!というわけではありません。
また胃潰瘍や胃がんを見逃さない為にも定期的は受診は必要だと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
※参照資料 日本消化器病学会機能性消化管疾患診療ガイドライン2014
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